「施設って、何するの?」と、よく聞かれます
施設で働いていると言うと、だいたいこの2つを聞かれます。
「施設看護師って、実際どんな仕事をするの?」 「病棟より楽って本当?」
求人票を見ても「健康管理業務」としか書いていないことが多くて、あれだけでは何も分からないですよね。私も転職を考えていたころ、同じところで止まっていました。
私は病院も介護施設も経験して、今は派遣で施設をメインに働いています。今日は施設看護師の仕事の中身を、「楽」でも「大変」でもなく、なるべくそのまま書いてみようと思います。
実際にやっている仕事の中身
まず、日々なにをしているのか。私がやってきたことを並べてみます。
- バイタルチェックと健康管理:血圧・体温・脈・呼吸・SpO2などを確認して、普段と変わりないかを診ていきます。
- 内服管理:処方された薬のセット、配薬、きちんと内服できたかの確認をします。
- 処置:軟膏塗布、褥瘡ケア、湿布、爪切り(白癬の方多いです)、膀胱留置カテーテルの交換など。
- 点滴・採血:医師からの指示で実施。体調をくずされた方や、食事の摂取量が不安定な方など。
- 胃ろうの管理・吸引:医療的なケアが必要な方。
- 受診対応:体調不良の方が出たときに、受診の付き添いを行います。
- 医師・家族・介護スタッフとの連携:気づいたことを橋渡しするハブ役。
- 看取り:人生の最後の時間に、そばで関わらせてもらう場面もあります。
求人票の「健康管理業務」という6文字には、これだけのことが入っています。
私は老健(介護老人保健施設)と特養(特別養護老人ホーム)の両方で働きましたが、やることの中身自体は、どちらもだいたい同じでした。施設のタイプで変わるのは業務そのものより、後で書く「医師の体制」と「夜間の形」のほうです。
病院と比べれば、手技の比率は確実に下がります。そのぶん増えるのが「観察」と「判断」。これが施設看護の主軸なんじゃないかな、と私は思っています。
病棟といちばん違うのは、時間の流れ方
処置の中身よりも、私が「違う世界に来たな」と感じたのは、時間の流れでした。
病院は分刻みです。検査、点滴、処置、オペ出し、指示受け。次から次に来るものを、落とさないようにさばいていく感覚がありました。
施設は、利用者さんの生活のリズムで一日が進みます。利用者さんが暮らしている場所に介護士さんがいて、その隣で私たちが健康面のサポートをする、という形です。
そして、関わる期間が長い。病棟なら退院で「お元気で」だったのが、施設では年単位で同じ方を見ていきます。去年の秋はまだ歩けていたな、とか、そういう時間の見え方になります。それが嬉しい日もあるし、少し切ない日もあります。
ざっくり並べると、こんな違いです。
| 病院 | 施設 | |
|---|---|---|
| 場の性格 | 治療の場 | 生活の場 |
| 時間の流れ | 分刻み・多重課題 | 利用者さんの生活リズム |
| 医療処置 | 多い | 日常的な処置と健康管理が中心 |
| 医師 | 常駐。すぐ相談できる | 常駐していないことが多い |
| 検査の設備 | 採血・レントゲンなどその場でできる | ない |
| 関わる期間 | 入院している期間 | 年単位。長く伴走することも |
同じ「施設」でも、老健と特養で変わるところ
ここでひとつ、求人を選ぶときに知っておいてよかったな、と思うことを書いておきます。
仕事の中身はだいたい同じでも、医師の体制と夜間の形は、施設のタイプでけっこう変わります。私が働いた範囲だと、こんな感じでした。
| 老健 | 特養 | |
|---|---|---|
| 医師 | 日勤帯に常勤の先生がいる(私がいたところは週4日) | 嘱託医の往診が月4回ほど |
| 相談のしやすさ | 先生の勤務日なら、たいていいつでも相談できた | 連絡をするか、次の往診を待つことになる |
| 夜間の体制 | 夜勤がある。看護師ひとり+利用者数に応じて介護士さん3〜4人のことが多い | オンコール。外部に委託していてオンコールなしのところもある |
| 関わる期間 | 数ヶ月で入れ替わることもある | 年単位。長い付き合いになる |
※施設によって体制はかなり違うので、あくまで私が見てきた範囲の話です。
老健は制度の上では「家に帰るための施設」なのですが、実際は帰る先が見つからなくて、そのまま長く入所される方がほとんどでした。数ヶ月で入れ替わることもある、くらいの感覚のほうが実際に近い気がします。
夜間については、老健では夜勤に入っていました。看護師は自分ひとりで、あとは介護士さんが3〜4人。特養ではオンコール当番をしていました。今はオンコールのない職場を選んで働いていますが、あの携帯を枕元に置いて寝る夜を知っているからこそ、選んでいるところがあります。
オンコールが外れると生活がどう変わるのか、具体的に書きました。夜の呼び出しがある働き方に疲れている方は、こちらもどうぞ(→【オンコールなしって、控えめに言って最高だよね。】)。
求人票を見るときは、施設の種類と一緒に「夜勤かオンコールか、どちらもないか」を見ておくと、入ってから戸惑いにくいのかなと思います。
大変だったのは、医師にすぐ頼れないこと
医師の体制の話を書きましたが、これが施設看護のいちばん大変なところにつながっています。
病棟にいたころは、気になることがあれば先生に報告して、そこから採血やレントゲンの指示が出て、その結果を見た先生が処置や治療を決めて、私たちがそれを実施する——という流れがありました。判断のいちばん重たいところは、医師が引き受けてくれていたんですよね。
施設では、その流れが難しい。先生がその場にいない日も多いですし、採血やレントゲンの設備もありません。手元にあるのは、バイタルと、目で見た変化と、「いつもとの差」だけです。
「この微熱、様子を見ていいのか」 「この食欲の落ち方、受診したほうがいいのか」
そこから「受診が必要かどうか」を最初に決めるのは、看護師です。頼りたいときにすぐ頼れない。ここが、施設に来ていちばん心細かったところかもしれません。
ここでひとつ補足させてください。「施設は看護師ひとりで心細い」と書かれているのを見かけますが、私が働いた施設は日中どこも看護師が複数いました。常にひとり、ということはなかったです。
ただ、急変や体調不良で他の看護師が受診に付き添って出ていくと、施設に残るのが自分ひとり、という時間がまれにありました。あの、何も起こらないでほしいと思いながら過ごす時間は、冷や汗ものです。
そして、その受診の付き添い——受診対応そのものが、私はずっと嫌いでした。
判断の重さもあります。でも正直に言うと、いちばんこたえたのは人の態度でした。連れて行った先で医師の言い方に傷ついたり、受診先の看護師さんの「こっちは忙しいのに」という空気を感じたり。自分も病院にいたので今はその忙しさが分かるのですが、当時の私にはそれを受け流す余裕がまったくありませんでした。
何を言われて、どうしてそんなに嫌いになったのかは、こちらに書いてあります。(→【受診対応が、ずっと嫌いだった。】)。
そんな私が、今では「受診対応、私が行きますか?」と言えるようになりました。
克服したわけではありません。数を重ねて慣れたのと、「受診対応、好きなんだよね。外に出られるし」と言うベテランの看護師さんに出会ったこと。それと、病院の待ち時間が意外といい息抜きになると気づいたこと。そのくらいのことが、じわじわ積み重なっただけです。
決め手になった出来事がもうひとつあるのですが、それはこちらに書きました。今まさに受診対応が嫌でたまらない方に読んでもらえたらうれしいです(→【受診対応が、気づいたら好きになっていた話。】)。
いちばん頼りにしているのは、介護士さんの「ちょっとおかしい」
医師にすぐ頼れないと書きましたが、そのぶん施設には、看護師よりずっと近くで利用者さんを見ている人たちがいます、そう介護士さんです。
食事も、入浴も、排泄も、一日中そばでケアをして見守ってくださっています。だから、変化にいちばん先に気づくのも介護士さんであることが多いです。
「なんか今日、元気ないんですよね」 「最近食べる量が少ない気がして」
この「ちょっとおかしい」が、本当によく当たります。数字にはまだ出ていないのに、あとから振り返ると、あそこが始まりだったな、ということが何度もありました。
なので私は、この一言をもらえる関係を大事にしたいし目指しています。話しかけやすい雰囲気でいることとか、声をかけてもらったときに手を止めて聞くこととか。そういう地味なことの積み重ねが、そのまま利用者さんの安全につながっている気がします。
お願いごとをするときも、伝わりやすい言い方を選ぶようにしています。「SpO2が下がったら呼んでください」ではなく、「顔色や唇の色が悪かったら、教えてください」というふうに。逆に介護士さんから「これって、どうしてこうするんですか」と聞かれたときは、こちらもきちんと説明するようにしています。そのやりとりの積み重ねで、だんだん息が合ってくる感じがあります。
施設の看護は、看護師ひとりで完結する仕事ではないなと思います。介護士さん、リハビリの方、ケアマネさん、栄養士さん。それぞれが見ているものを持ち寄って、やっと利用者さんの全体が見えてくる。そのなかの一員として動くのが、施設看護師なのかなと思っています。
「楽そうだね」に、どう答えているか
「施設って楽なんでしょ」と言われると、私はたいてい「忙しい時は忙しいですよ」と答えています。
病棟の大変さは、量とスピードでした。施設の大変さは、判断の重さと、人との距離の近さです。種類が違うので、どちらが楽とは言いにくいというのが正直なところです。
そして、病院より少なくなるものもあります。急変対応の場数と、医療機器を扱う機会です。人工呼吸器も心電図モニターも、施設では扱いません。そこら辺の経験を積みたい時期なら、病院のほうが向いていると思います。
施設で働く上で病院と比べて離れるものと上達するものを並べてみた記事もあるので、気になる方はこちらもどうぞ(→【病院から施設に移って、スキルは落ちたのか】)。
施設に合いそうなのは、こんな人かもしれません
私の実感でしかありませんが、施設看護はこういう人に合う気がします。
ひとりの人と、じっくり長く関わりたい人。まわりの変化によく気づく人(病棟でそのセンサーが敏感すぎて疲れてしまった人、あなたのそれは施設だと武器になります)。生活のリズムを整えながら働きたい人。そして「治す」より「支える」看護がしたい人。
逆に、病院勤務のスピード感が好きな人や、急変対応の経験を積みたい人には、物足りない場所かもしれません。どちらが上ということでもなく、求められるものが違うだけの話だと思っています。
病院で消耗して「私、看護師に向いてないのかも」と思っている人がいたら、環境が変わるだけで苦手が消えることは本当にあります(→【看護師をしていて気づいた。苦手なことは克服じゃなくて、環境で消えるものだった】)。
施設の求人は、派遣にもたくさんあります。オンコールなし・日勤のみ、といった条件で探しやすいのも派遣のいいところです。登録から実際に働き始めるまでの流れは、私が通った順番どおりに書いてあるので、探し方から知りたい方はこちらへ(→【派遣看護師になるには?登録から働くまでの流れを実体験で解説します】)。
派遣という働き方そのものが自分に合うかどうかで迷っている方には、向いている人と向いていない人の線を正直に引いてみた記事もあります(→【派遣看護師に向いてない人・向いてる人。両方やった私が正直に線を引いてみた】)。
※施設によって体制も業務範囲も違うので、実際に働く前に求人票と面談で確認してみてくださいね。

